震災から2週間

まず、多くの方からいただいた励ましに心からお礼を申し上げます。
今回のの地震で当院の図書室は天井・床・壁が損傷しドアも開かず、室内にいた私は崩れた壁の隙間からようやく引っ張り出してもらいました。かすり傷一つなかったこと、自宅がほとんど無傷だったことは本当に幸運でした。図書室のあった外来棟は危険のため立ち入り禁止となり、蔵書・資料を持ち出すことも不可能となりました。それでも患者さんや通所リハビリテーションの利用者さんに事故がなかったことは本当にありがたいことでした。いま病院は使用可能な入院棟に病院の全機能と職員を集中し、混雑した中でもどうにか診療を続けています。病院周辺は被害が少なく、全国からの支援者の力を借りて、被害の大きな他病院からの転院患者さんも何とか受け入れています。
今回の震災では、出版社・データベース提供者など医学情報にかかわる方々から被災地でのフリーアクセスなどの素早い支援があり、また多くの図書館・図書室の方々からの支援の表明がありました。図書室にかかわる者としてとてもうれしく、また誇らしく感じます。なれない地で支援に当たる医師からも感謝する声を多く聞きました。
いまは、後方の雑多な業務を手伝いながら、可能な限り情報提供をしていくこと位しかできませんが、近隣の病院の状況や被災した方々のことを考えると、愚痴を言っているわけにはいきません。場所も蔵書もなくしてもまだまだやれることを求めて行きたいと思っています。
図書室は物と場所だけではない、人のネットワークに支えられている事をあらためて強く感じております。

"音声+テキスト"の医学情報

薬剤師さんから「(音声+テキスト)で提供されている医学情報はないか」という問い合わせがあったので、いくつかリストアップしてみたのですが、まだ他にも色々ありそうです。ご存知の情報源があったら教えていただけると嬉しいです。
 
NIH - NIH Radio http://p.tl/eGhG
FDA Patient Safety News http://p.tl/WfS1
CDC - Podcasts http://p.tl/XOU4
NIHSeniorHealth http://nihseniorhealth.gov/videolist.html#eatingwell
Videos and Cool Tools: MedlinePlus http://p.tl/Fp-w
Interactive Tutorials: http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/tutorial.html
Anatomy Videos: http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/anatomyvideos.html
NLM Director's Comments Podcasts: http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/directorscomments.html

青柳文庫

仙台に住んで40年以上になる。今頃になって「青柳文庫」のことを知った。ちょっと、いやかなり恥ずかしい。最初の公共図書館といわれる青柳文庫は、青柳文蔵が蔵書2万冊、金千両(これは救荒用の籾倉にも使われた)を仙台藩に寄贈して作られたものだが、身分や住所を問わず、誰にでも貸出を行っていたそうだ。戊辰戦争後に廃止されてしまったが、蔵書の一部は宮城県図書館など数館に所蔵されているらしい。
青柳文庫について調べていたら、1990年代初めに「仙台市南部に図書館を作る会」(20年前には市南部には図書館がなかった。いまは市民センターに図書館がある。)が編集し、岩手県東山町(青柳文蔵の生地)教育委員会が発行した本(小冊子)を見つけた。身近なことが意外にわかっていないと反省。
青柳文蔵とその文庫の思想像」は出版翌年に米国議会図書館(LC)から譲渡の申し込みがあったそうだ。もちろんいまもLCに所蔵されている。そこまで収集するLCもすごい。


書は賢子孫なり 日本文化史上の不滅の光青柳文庫 
https://lib-www.smt.city.sendai.jp/licsxp-opac/WOpacTifTilListToTifTilDetailAction.do
青柳文蔵とその文庫の思想像
https://lib-www.smt.city.sendai.jp/licsxp-opac/WOpacTifTilListToTifTilDetailAction.do

参考文献に注目

参考文献に注目
いま、岩田健太郎先生の編集した「感染症999の謎」を読んでいる。20人ほどの著者が分担執筆した999の謎がQ&A形式になっている。中身もとてもおもしろいのだけれど、感心したのは参考文献の書き方。文献がJournal Articleの場合、すべてPMIDがついている。PubMedをつかえば、Single Citation Matcherを使わなくても、8桁の数字の入力だけで一発で文献にたどり着く。この本を書いた著者たちは、読者が参考文献を読むことを確信しているのだろうな、と思う。忙しい臨床医の時間を節約できるようにという配慮も感じる。できれば国内文献には医中誌IDをつけてくれるともっと良かったけれど。
そのほかにも、国立国会図書館のリサーチナビが参考文献として挙げられていたり、ライブラリアンとしては「おっ。」と思う本なのです。

感染症999の謎

感染症999の謎

走れ!収集ロボット

昨日、書店さんが国立国会図書館月報を届けてくれました。今回の注目記事は「走れ!収集ロボット インターネット資料収集のしくみ」*1です。国立国会図書館のWeb Archive Project(WARP)について詳細に解説されています。
ウェブサイトは重要な情報源ですが、日々変化するため、その保存が課題です。先日も厚生労働省のホームページにあった報告書がなくなって困っているドクターがいたので、WARPについてお知らせして感謝されましたが、そのとき、「こんなのは、よほど趣味的な人しか探せない」と言われてしまいました。もっと広く知ってもらえるよう宣伝して欲しいと思って、WARPの利用者アンケートにもそのように意見を書きましたので、この記事は大歓迎です。早速、来年初めに図書室利用者向けのニュースで取り上げようと思っています。
インターネット資料収集保存事業は
ウェブサイト:http://warp.ndl.go.jp/search/
著作物:http://warp2.da.ndl.go.jp/xmlui/

できれば晴れた日に 自らの癌と闘った医師とそれを支えた主治医たちの思い

できれば晴れた日に―自らの癌と闘った医師とそれを支えた主治医たちの思い (へるす出版新書)

できれば晴れた日に―自らの癌と闘った医師とそれを支えた主治医たちの思い (へるす出版新書)

1年ほど前だろうか、ある日出勤すると、この本が机の上においてあった。出入りの書店さんが見計らいでおいていったものだ。意外だった。私が闘病記のようなものを読まないことはこの書店さんは良く知っているはずである。なにげなく裏返して著者略歴をみて驚いた。10年以上前に私の勤務する病院に当直支援に来てくださっていたドクターで、その後も講義に来ていただくなど、縁の深い方である。まだ働き盛りでもあった。
さて、この本は、40代で胃がんで亡くなった、元みやぎ県南中核病院呼吸器内科部長板橋繁先生の闘病記である。ただの闘病記ではない。再発を宣告された後、これを書くことを思い立ち、発症時からの日記を振り返り、感想や注釈、あるいは分析を書き加える形でつづられていて、治療に当たった医師たちも、その時の状況や、医師として、友人としての思いを書き込んでいる。ただでさえ向き合うのが困難な病気にあって、よくこれだけの作業を成し遂げたと、その強さに感銘を受けた。再発後もぎりぎりまで診療を続けられ、医学文献を読み、論文を書き、学会にも参加、頼まれた講演もこなしていたという。

勤務を終える日にこの日記も終わっている。最後の言葉に胸を打たれる。
いよいよこれで敗戦処理に入る。悪い闘いではなかった。」


追記:以前、下書きのまま保存していたものです。最近、Twitterでもこの本が話題になっているので書き直してみました。

MeSH-2011

先月、MeSH-2011が公開されました。http://www.nlm.nih.gov/mesh/introduction.html
今回も多くの新しいdescriptorが採用されていますが、気になったのが"Epidemics"と"Pandemics"。この二つはこれまではEntry Termで"Outbreak"にマッピングされていましたが、今回、Descriptorになりました。2010年に採用されるかと思っていましたが、Descriptorの変更はそう簡単ではないのでしょう。流行のフェーズにあわせた検索におけるノイズはある程度回避されそうです。だた、Tree StructureやScope Noteの内容については感染症の先生方のご意見も聞きたい気がします。
http://www.nlm.nih.gov/cgi/mesh/2011/MB_cgi?mode=&term=Epidemics&field=entry#TreeN06.850.290.200
そのほかElectroencephalography(EEG)の下位語にBrainWavesが入ったり、CatheterがDescriptorに採用されたり(これまでCatheters, Indwellingはあった)、ゆっくり見ていくとまだまだ面白そうなことがありそうです。
毎年思うのは、新規MeSHだけでも全部きちんとチェックしていたら、もう少し賢くなっていただろうに・・・・ということ。